1. 先天性、後天性免疫不全症症例の病理所見を検討し、生体防御機能の機能的評価を、組織像とあわせて検討した。各種先天性免疫不全症では、類型化された機能障害により、それぞれ異なった代償的な機能補完がなされている。特にBリンパ球を伴う無γグロブリン血症および高lgM症候群では、脾臓濾胞周辺帯Bリンパ球の残存あるいは過形成が認められ、この群のBリンパ球が特殊な分化、あるいは通常のBリンパ球を成熟させるサイトカインネットワークとは異なることが明らかとなった。また、HlV感染による後天性免疫不全症候群においても、Tリンバ球失調による濾胞を介したBリンパ球分化は障害され、形成不全に陥るが、濾胞周辺帯Bリンバ球は相対的に保たれ、形質細胞への分化を認めた。このリンパ球が保持されていることによる、生体防御機構により代償されていると考えられた。 2. 単球様Bリンバ球に由来する悪性リンパ腫症例の臨床病理学的検討により、発症要因としての局在性、先行する感染症の重要性が明らかとなった。組織標本から抽出した腫瘍細胞DNAについての検討では、明確な所見は得られなかった。 3. LPSで誘導された単球様Bリンバ球の組織親和性を、細胞接着因子の関与の観点から検討した。LPSに組織抽出液を加えてin vivoで反応させると、抽出液由来の組織に単球様Bリンバ球の浸潤が観察され、小動脈を含む細小血管周囲に出現した。血管と浸潤細胞との間に関与する細胞接着因子は、I-CAMが陽性であったが、その他の既知の因子については明確な関与は認められなかった。今後、積極的に関与する細胞接着因子を、この実験系を用いて抽出する予定である。 4. 実験的ラット胃潰瘍病変における単球様Bリンバ球は、Helicobacter pyloriの感染実験がうまくいかず、有効な検索ができなかった。実験胃潰瘍病変では、単球様Bリンパ球の反応性の増生が、潰瘍初期病変で見られ、同時期の脾臓濾胞周辺帯にはこの領域の拡大とともに単球様Bリンパ球増生、また細胞増殖因子の検索により、この部位における増生がみられ、胃潰瘍病変での単球様Bリンパ球の細胞増殖因子の発現とともに、増殖は相互の部位で生じていることが明らかとなった。感染実験の方法をさらに検討する必要がある。
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