1. サイクリンE発現ベクターの作成とマウスNIH/3T3細胞への導入 (1) 米国スクリップス研究所S.Reed博士より供与されたサイクリンEcDNAの全コーディング領域を含むEcoRI断片(2.5kbp)をサイトメガロウイルスプロモーターを有する真核生物発現ベクターpCDNA3にサブクローニング後、制限酵素断片解析ならびにインサートのシークエンシングにより、恒常的サイクリンE過剰発現ベクターを得た。 (2) 恒常的サイクリンE過剰発現ベクターを、リポフェクチン法によりNIH/3T3マウス線維芽細胞株に導入した。導入後、ネオマイシン誘導体G418にて選択を行い、pCDNA3のみの導入株を含め、各細胞株につき10クローンを回収、DNAレベルならびに蛋白レベルでサイクリンEcDNAの組込みならびに発現を確認した。 (3)サ イクリンE発現ベクター導入NIH/3T3マウス線維芽細胞株とpCDNA3空ベクター導入株の平皿培養下での増殖態度の差を観察したところ、両群の間に有意の増殖速度の差を認めることは出来なかった。また、サイクリンE発現ベクター導入株において形質転換フォーカスの形成はみられなかった。 2. サイクリンEアンチセンスベクターの作成とヒト胃癌細胞株への導入 (1) 1-(1)で使用したサイクリンEcDNAの転写開始部位を含む110bp断片をpCDNA3にアンチセンス方向にサブクローニング後、制限酵素断片解析ならびにインサートのシークエンシングにより、サイクリンEアンチセンスベクターを得た。 (2) サイクリンEアンチセンスベクターを、リポフェクチン法によりサイクリンE過剰発現株TMK-1、MKN-7胃癌株、サイクリンE低発現株MKN-28、MKN-74胃癌株に導入した。導入後、ネオマイシン誘導体G418にて選択を行い、ベクターのみの導入株を含め、各細胞株につき10クローンを回収した。 (3) サイクリンEアンチセンスベクター導入胃癌細胞株とpCDNA3空ベクター導入株の平皿培養下での増殖態度の差を観察したところ、両群の間に有意の増殖速度の差を認めることは出来なかった。 以上より、今回の研究ではサイクリンEが癌遺伝子として作用する直接の証拠を得ることは出来なかった。
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