研究概要 |
分子細胞遺伝学の手法であるcomparative genomic hybridization法を用いて、食道癌をはじめとした消化器癌を主に、染色体・遺伝子の量的異常の解析を行っている。現在まで、実施してきた症例は、口腔扁平上皮癌(データの一部はJ Oral Pathol Med 1999)、食道扁平上皮癌(培養細胞株に関するデータは投稿中、外科切除材料に関しては執筆中)、胃腺癌(執筆中)、胆道腺癌(データの一部はOncology 1999)、膵臓癌(執筆中)、肝細胞癌(投稿中)とその他の臓器に発生した腫瘍である(Cancer Res 1998,Gene Chromosomes Cancer 1998,J Neuro- Oncol 1999)。 これらの研究を通じて現時点で明らかになった事は以下の通りである。(1)癌の種類(発生臓器)によって、染色体・遺伝子の異常が異なっているが、同一臓器に発生した異常は、特定の染色体・遺伝子に集中している。このことは、癌の原発部位の同定にも有用であることを示唆している。(2)さらには、染色体・遺伝子異常数は、病期と相関している。すなわち、癌の進行に伴って、異常は増加する。(3)また、癌の生物学的特性、すなわち悪性度と相関しており、悪性度が増すと、異常個所も増加する。また、特定の変化と患者予後との関係も明らかになりつつある。(4)各臓器における癌発生・進展に係わる染色体・遺伝子異常を明らかにするとともに、それらの順序性を明らかにすることができた。我々の施設が保有しているCGH解析データは本邦では群を抜いて1位あることは明らかであるが、世界的にもトップレベルにある。これらの情報のさらなる応用を現在開始している。
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