研究概要 |
細胞周期調整腫瘍抑制遺伝子の役割をもつp16^<INK4A>,p15^<INK4B>,p27^<Kip1>各遺伝子変異の有無について、下垂体腺腫手術例33例を対象に解析を行なった結果、p16およびp15遺伝子の遺伝子座である9p21-22のLOHを2例に、p27遺伝子の遺伝子多型を3例に認めたが、腫瘍に特異的な突然変異は検出されなかった。これらの成績からp16、p15、p27各遺伝子の突然変異は下垂体腺腫発生に関与していないことが推測された。一方、p27遺伝子の存在する第12染色体のトリソミーがFISH法の可能であった5例全例に観察され、このトリソミーが一部の下垂体腺腫の発生に関与していると考えられた。 細胞周期調整に関与する腫瘍抑制遺伝子の他に、MEN1型の原因遺伝子MEN1も腫瘍抑制遺伝子とみなされている。MEN1型ではない、散発性の下垂体腺腫31例におけるMEN1の不活性化の有無について検討した所、MEN1の存在する11q13のLOHは1例のみに見られ、また、2例で第11染色体のトリソミーがFISH法による検索で確認された。MEN1の突然変異は、LOHのあった1例に検出されたが、残る30例には異常を認めなかった。以上の成績からMEN1の不活性化は散発性の下垂体腺腫の発生原因としてはまれと推測された。 下垂体腺腫の発生増殖に対する視床下部ホルモンの関与をみるため、44例のACTH産生下垂体腺腫における腫瘍由来のCRHの発現と腫瘍増殖能について検討した結果、in situ hybridization法によるCRHmRNAの発現量とMIB-1標識率には強い相関性(p<0.0001)のあることが示された。この成績は腫瘍由来のCRHがautocrine的な機序でACTH産生腺腫の増殖に関与することを示唆したものである。
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