1. 硬化型神経周膜腫(Sclerosing Perineurioma) 最近新たに提唱された硬化型神経周膜腫を病理学的に検討した。この腫瘍は成人の手指や手掌の真皮から皮下組織にかけて発生する。組織学的に類上皮細胞の束状配列や紡錐形細胞の増生が豊富な膠原線維間で認められた。免疫組織化学的に多くの腫瘍細胞がEMAに陽性を示したが、S-100proteinは陰性であった。電顕的には多くの細胞が細長い細胞質突起を有しており、吸飲小胞、非連続性の基底板、接着装置などが観察され、神経周膜細胞の特徴を示していた。本腫瘍は手指に発生する他の病変との鑑別が必要であるが、特徴的な組織所見とともに電顕および免疫組織化学的検討がその診断には有用であった。 2. 末梢神経鞘腫瘍における神経周膜細胞の関与 良性末梢神経鞘腫瘍の代表である神経鞘腫はシュワン細胞からなることが明らかにされている。一方、神経線維腫の構成細胞はいまだ確定していない。その理由の一つに神経周膜細胞のマーカーであるEMAが神経線維腫ではほとんど陽性を示さないことがあげられる。我々は各種末梢神経鞘腫瘍の構成細胞を明らかにするため超高感度免疫染色法であるCatelyzed signal amplification(CSA)法を用いて免疫組織化学的検討を行った。その結果、神経線維腫では、全例でEMA陽性の腫瘍細胞が多数検出された。神経鞘腫は被膜部分が強くEMA陽性を示していたが、腫瘍内で陽性所見は得られなかった。今回のCSA法を用いた検討の結果、神経周膜細胞は神経線維腫の重要な構成要素であることが確認された。
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