末梢神経鞘腫瘍における神経周膜細胞の関与を明らかにするために以下の研究を行い、(1)神経周膜細胞からなる悪性腫瘍の概念を提唱し、(2)硬化型神経周膜腫の特徴を明らかにし、さらに(3)神経線維腫において神経周膜細胞が重要な構成要素であることを証明した。 1. 悪性神経周膜腫(perineurial MPNST) 神経周膜細胞で構成される悪性腫瘍の臨床病理学的特徴を明らかにすることを試みた。その結果、悪性神経周膜腫は悪性末梢神経鞘腫瘍の約4%を占めていると判断された。良性神経周膜腫と同様に、神経との連続性を示すことはまれで、神経線維腫症との関連性も乏しい。また、通常の悪性末梢神経鞘腫瘍に比べ、予後が良好である可能性が示された。パラフィン材料を用いたFISH法による染色体分析ではセントロメアシグナルが検出できなかった。 2. 硬化型神経周膜腫(Sclerosing Perineurioma) 最近新たに提唱された硬化型神経周膜腫を病理学的に検討した。この腫瘍は成人の手指や手掌の真皮から皮下組織にかけて発生する。組織学的に類上皮細胞の束状配列や紡錐形細胞の増生が豊富な膠原線維間で認められた。免疫組織化学的に多くの腫瘍細胞がEMAに陽性を示したが、S-100 proteinは陰性であった。電顕的にも神経周膜細胞の特徴が明らかであった。 3. 末梢神経鞘腫瘍における神経周膜細胞の関与 各種末梢神経鞘腫瘍の構成細胞を明らかにするため超高感度免疫染色法であるCatalyzed signal amplification(CSA)法を用いて免疫組織化学的検討を行った。その結果、神経線維腫でEMA陽性の腫瘍細胞が多数検出され、神経周膜細胞は神経線維腫の重要な構成要素であることが確認された。
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