ヒト癌腫での癌関連遺伝子産物発現とDNAミスマッチ修復異常及び免疫系との関連

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09670190
• 研究機関: 高知医科大学
• 研究代表者: 降幡 睦夫 高知医科大学, 医学部, 助手 (10209158)
• キーワード: cyclin / cyclin dependent kinase / p27 / MSH2 / 食道癌 / 膀胱癌

研究概要

1998年の追加症例も含め、外科的に切除されたヒト食道扁平上皮癌のホルマリン固定材料をパラフィン包埋とし、これよりスライド切片を作製しcyclin B1、D1、E抗体、cyclin dependent kinase(CDK)抗体及びp27抗体を用いた免疫組織化学的検索を行い、癌細胞周期での各々の発現状況を患者の予後及び臨床病理学的因子との関連において統計学的に比較検討した。食道癌では癌細胞において細胞質主体のcyclin B1過剰発現を70%以上の症例に認め、これら患者はcyclin B1過剰発現を伴わない患者に比べ有意に予後不良であった。さらに、正常細胞周期においてはcyclin-CDK複合体の形成が細胞周期を進行させる働きがあり、よって癌細胞での両者の発現性につき組織レベルで観察したところ、cyclin D1の過剰発現はCDK4発現と相関せず、しかもこれら逸脱症例は腫瘍の進行進展が著しく、これらは食道癌細胞が正常細胞周期から逸脱し強力に浸潤増殖を呈している可能性を示唆した。Western blot法でのこれらcyclin、CDKとCDK抑制因子のp27蛋白発現の関係についての検討では、cyclin D1とp27過剰発現はよく相関し、免疫組織化学的検索でも、これらp27過剰発現症例の患者はp27低発現症例の患者に比べ有意に予後不良であるという一見矛盾する結果が得られた。一方cyclin Eとp27発現は相関は得られず、cyclin E過剰発現も10%以下の症例に見られるのみで、食道癌でのこれら細胞周期関連因子の特徴的な発現状態及び腫瘍動態へのそれぞれの関わりを病理組織学的に提示することができた。
ヒト膀胱癌移行上皮癌においては、同様にホルマリン固定材料よりスライド切片を作製しミスマッチ修復遺伝子産物のMSH2蛋白の発現を免疫組織化学的に検索した。膀胱癌では25%の症例にMSH2蛋白の減弱をみ、うち2例は発現消失を示した。さらに発現減弱症例患者は有意に癌再発を呈しやすく、これら結果は遺伝性非腺腫性大腸癌以外の癌腫でもMSH2蛋白の発現異常を呈し、それが腫瘍動態に影響を与える事を示唆するものとなった。今後はミスマッチ修復遺伝子異常に基づくp53遺伝子を中心とした細胞周期調節因子等の遺伝子異常につき検討を加える。

研究成果

• [文献書誌] Takeuchi T.・・Furihata M elal: "Chromosomal mapping and expression of the human B120 gene." Gene. Vol.213. 189-193 (1998)
• [文献書誌] Arayama T,Furihata M,etal.: "Positye correlation between p27 KIP1 expresston and progression of human esopnageal sgnamous sell cararoma." International Jaurnal of Cancer (pred.Oncol.). Vol.79. 439-443 (1998)
• [文献書誌] Inoue K・・・・Furihata M,dt al.: "Ovzrexpression of C-Met proto oncogene associated with chromophilic rend cell cakinoma with papillary growth." Virchon Archiv. Vol.433. 511-515 (1998)
• [文献書誌] Jin Tx,Furihata M,et al.: "Human mismatch repair gene (hMSH2)" Cancer. 85. 478-484 (1999)
• [文献書誌] Murakami H,Furihata M,et al.: "Determiration of the prognostic significance of cyclin B1 orevexpression in patients with esophageal sguamous cell carcinoma." Virchon Archiv. Vol.434. 153-158 (1999)
• [文献書誌] Matsumoto M,FurihataM,el al.: "Comparison of deregulated expression of cyclin D and cyclin E with that of cyclin-dependent kinase 4(CDK4)and CDK2 in human oesophageal sguamous cell carainoma." (印刷中)British Joumal of Cancer. 印刷中. (1999)