大腸腺腫の一亜型として鋸歯状腺腫という名称が提唱され広く受け入れられているが、その悪性化の危険性と細胞分化に関しては十分解析されていなかった。そして、この腫瘍は肉眼的には平坦型と隆起型ともに認める。表面型早期癌の発育進展を解析するにあたり、この腫瘍の発育進展や悪性化の危険性などを明らかにする必要がある。昨年度鋸歯状腺腫の悪性化の潜在能やp53蛋白の癌化における役割、細胞分化(胃の腺窩上皮への分化)に関して解析し論文として投稿し、Journal of Pathology(1999)に受理され印刷中である。 そして今年度は、鋸歯状腺腫または過形成性(化生性)ポリープと同じ細胞系列上にあると考えられた癌(あるいはそれら由来の癌)の病理組織学的特徴と細胞分化を解析した。ひとりの患者の切除大腸に6個の癌を認めたが、鋸歯状腺腫と過形成性(化生性)ポリープも多発したことに加え癌の3病変に鋸歯状腺腫または過形成性(化生性)ポリープ成分を伴うことよりそれらは鋸歯状腺腫または過形成性(化生性)ポリープ由来であることが示唆された。これらの癌は、(1)癌腺管の鋸歯状腺腫類似の鋸歯状構築、(2)特徴的なレース状の構造、(3)著明な浸潤性発育と先進部での脱分化、(4)免疫組織化学的に胃型形質の発現、という共通する組織像と免疫組織化学的特徴を有し、それらの所見が鋸歯状腺腫または過形成性(化生性)ポリープ由来の癌の抽出に有用であると考えられた(Journal of Pathology 1999、投稿中)。このような癌の全大腸癌における頻度や悪性度、遺伝子解析も今後の課題である。
|