大腸腺腫の一亜型である鋸歯状腺腫にも平坦型と陸起型があり、表面型早期癌の発育進展を解析するにあたリこの腫瘍の発育進展や悪性化の危険性などを明らかにする必要があった。昨年度鋸歯状腺腫の臨床病理学的特徴とp53蛋白発現の解析により通常の腺腫と同様な癌化の危検性がありp53蛋白の関与もあることが判明した。また、細胞分化の解析によりそれらは大腸病変でありながら胃の腺窩上皮への分化を示すことを我々が世界で初めて報告した。さらに、鋸歯状腺腫または過形成性(化生性)ポリープと同じ細胞系列の大腸癌が胃型細胞分化を示すことも我々が世界で最初に発見した(Journal of Pathology2000、印刷中)。 以上の様に腫瘍の細胞分化の違いがその組織像や性格の違いと関連があることが示唆されたので、今年度は細胞分化の違いと発育進展様式の関連をさらに詳細に研究した。 大腸の通常の腺腫と進行癌における細胞分化の違いを解析し、細胞分化の違いが発育進展と関連があることが判明した。すなわち、CD10陽性の癌は静脈浸潤が著明で血行性転移(肝転移)を来たす頻度が高いことや、MUC2陽性のものは悪性度が低いことなどが示された(投稿中)。現在、潰瘍性大腸炎の合併した癌や絨毛性腫瘍における解析も進行中である。 これらのデーターを基礎として、早期癌の悪性度評価がより正確になされうる可能性が考えられるので、表面型大腸癌や隆起型癌を含む種々の早期癌における細胞分化の解析を今後の課題としたい。
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