大腸腺腫の一亜型である鋸歯状腺腫は肉眼的には平坦型と隆起型ともに認める。表面型早期癌の発育進展を解析するにあたり、この腫瘍の発育進展様式も明らかにする必要があった。昨年度までに大腸の鋸歯状腺腫と形成性ポリープは組織形態的に類似性があり、それらは大腸病変でありながら胃腺窩上皮型の粘液形質を発現を認め、通常の管状腺腫とは異なる細胞系列の病変であることを報告した(Journal of Pathology 1999)。 そして今年度は、鋸歯状腺腫や過形成性ポリープと同じ細胞系列上にあると考えられた癌(あるいはそれら由来の癌)は、(1)癌腺管の鋸歯状腺腫類似の鋸歯状構築、(2)特徴的なレース状の構造、(3)著明な浸潤性発育と先進部での脱分化、という特徴的な組織像を呈し、免疫組織化学的に鋸歯状腺腫や過形成性ポリープと同様に胃型形質を発現することを報告した(Journal of Pathology 2000)。一方、通常の大腸癌においては胃型形質を発現する癌は、3%程度とまれであるがこのような特殊な癌化経路の存在が示唆された(投稿中)。 我々の免疫染色による解析では、このような胃型大腸癌においても癌化におけるp53蛋白の関与が示唆されたが、このような癌の悪性度評価や癌化の機序における遺伝子異常の解析が今後の課題である。
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