研究概要 |
1.ヒト大動脈動脈硬化巣における組織因子発現 宮崎医大附属病院および関連病院での病理解剖症例(死後6時間以内;23例)より大動脈を切り出し、4%パラホルムアルデヒドで固定後、病理組織学的にdiffuse intimal thickening(DIT)'fibrofatty lesion(FA)'atheroma(AT),complicated lesion(CL)に分類し、各病巣における組織因子の局在を免疫組織化学により検討し、ビオチン化第VIIa因子結合能と合成基質(S-2222)分解による第X因子活性能を指標に組織因子活性を測定した。 (1)ヒト動脈硬化巣のすべてのステージ(DIT,FA,AT,CL)で組織因子が発現し、内膜平滑筋細胞、マクロファージ、内皮細胞、粥腫のnecrotic coreに局在していた。(2)この組織因子は、ビオチン化第VIIa因子との結合能を有し、凝固活性を有していた。 2.家兎内膜肥厚モデルにおける組織因子発現 大動脈バルーン傷害後の内膜肥厚モデルを用いて、内膜肥厚巣における組織因子の発現について免疫組織化学的に局在を、Northern blotting によりmRNA発現を、さらに合成基質(S-2222)を用いて活性を測定した。 (1)正常の動脈壁では外膜の線維芽細胞、脂肪細胞に組織因子の陽性像を認めたが、内・中膜には認めなかった。(2)内膜傷害後12時間より中膜の内腔側に組織因子陽性の平滑筋細胞が認められ、経時的に数を増やし、内膜内に侵入していく像が観察された。(3)肥厚内膜巣で増殖した平滑筋細胞の大部分は組織因子に陽性であった。(4)組織因子mRNA発現および活性は傷害後24時間で増加し、8週後まで持続していた。 以上の結果より、動脈硬化巣における血栓形成(Acute coronary syndromeの発生)に平滑筋細胞・マクロファージに発現した組織因子の関与が重要視される。
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