研究概要 |
我々は,胸腺上皮性腫瘍の発生,進展,増殖能,悪性度について免疫組織化学的に検討し,bcl-2蛋白,Fas抗原の発現およびアポトーシスがこれらの検索に重要であるということを発表した(Modern Pathology 1997).ただし,TUNEL法を用いたアポトーシスの検索では固定条件が重要であるということも示した(Arch Pathol Lab Med 1998).また,胸腺腫の胸腺癌への進展についても,CD5の発現が関与している可能性があることが示唆された(投稿中). 現在までに,剖検症例約二千例の胸腺を病理組織学的に検索してきたが,“microscopic thymoma"と考えられるような症例は一例しか認めず,その免疫組織化学的検討では,この病変が胸腺腫の初期病変であるとの確信は得られていない.しかしながら,退縮した胸腺組織の中に,胸腺上皮細胞が増殖を示していると考えられる症例も小数例認められ,現在,これが腫瘍性増殖と考えられるか免疫組織化学的検討を行っている. これと平行して,胸腺腫瘍の摘出時に採取された正常胸腺組織も病理組織学的に検索しているが,数例に上皮の異型性が見られ,初期病変の可能性があり検討中である.また,重症筋無力症の患者では胸腺腫の合併がよくみられ,胸腺腫の無い症例では,リンパ濾胞性過形成がみられる事が知られている.胸腺腫に隣接した胸腺組織にもこのリンパ濾胞がみられ,免疫組織化学的に違いがあるかどうかも併せて今後検討したい.また,Western Blottingを行い,アセチルコリンレセプター関連抗原の発現についても検索して行きたい.
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