研究概要 |
びまん性肺疾患に対する開胸・胸腔鏡下肺生検を用いて以下のような検討を行った、又は進行中である。 1,IPF急性増悪例6例の増悪時における開胸生検組織のHE及びEMG染色切片を病理組織学的に観察した結果、6例中5例には背景の慢性的変化としてのUIPがみられ、それに加えて新鮮な又は器質化期のDADが種々の程度にみられた。1例は剖検にてUIPが確認された。DADにはウイルス感染など明らかな原因を示す所見はなく、IPFの自然史としてDADがおこりうると考えられた。 2, UIPの開胸・胸腔鏡下生検例のうち、上記6例を含めてこれまでに材料を入手した27例につき、4種のmatrix metalloprotease MMP1,2.3.9)と2種のtissue inhibitor of metalloprotease (TIMP1,2)の発現を、type-IV collagenの分布とともに酵素抗体法2重染色法にて検討した結果、MMP2,9,TIMP1,2が肺胞マクロファージ、II型肺胞上皮、線維芽細胞、細気管支上皮に種々の程度に発現し、特にactiveな線維化部において線維芽細胞に強いTIMP2の発現がみられた。急性増悪例のDADの組織像の部分では、UIPの部分に比べて、MMP,TIMPとも発現は弱かった。 3, UIPと比較するため、非特異性間質性肺炎16例、急性間質性肺炎9例、剥離性間質肺炎1例、閉塞性細気管支炎を伴う器質化肺炎5例についても同様の検討を行った結果、非特異性間質性肺炎においてTIMP2の発現がやや目立ったものの全体にUIPに比べ発現は低かった。 4,現在各種サイトカイン(TNFα,IL-1,IFNγ,IL-6)、増殖因子(PDGF,IGF-I,TGFβ,bFGF)の発現を酵素抗体法及びin situ hybridizationにより検討中である。さらにHE染色組織での病理学的変化と各種活性物質の発現とを対比しそれぞれの物質の組織傷害修復における作用を考察する予定である。
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