研究概要 |
これまでの表面型大腸がんに関する検討で,実体顕微鏡観察によりH型(蜂の巣様)構造が認められ,病理組織学的には正常腺管と類似した単一管状腺管の密な増生をみることを発表してきた.遺伝子工学的には,micro-dissectionを用いたPCR-RFLP法,ドットハイブリダイゼーション法にて,表面型大腸腫瘍ではK-rasの変異が極端に低率であることを見出した.免疫組織学的には,浸潤癌における変異型P53は表面型・隆起型ともに陽性頻度が同程度であった.転移関連因子と考えられているDCCのコドン201多型性の検討では,進行癌と表面型癌で20^<Gly>型の頻度が高いことを示した.なお,ホルマリン固定材料からのDNA抽出など形態保存に配慮した研究方法には以前より取り組み,形態学的な見地から遺伝子検索を行っているが,本年度においては,全ゲノムを均一に増幅するDOP-PCR法を用いたDNA解析を開始し,剖検材料である胎児腎におけるangiotensin converting enzyme多型性の検出を可能にしており,今後は染色体解析への応用を試みたい.また,K-rasの活性化を負の方向に制御するがん抑制遺伝子NF1についてもRT-PCRを行い,進行大腸がんにおけるmRNAの発現量を検討中である.
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