研究概要 |
ヒト表面型大腸がんの形態学的特徴として,実体顕微鏡観察によって蜂巣様の表面構造がみられ,組織学的には正常線管と類似した単一管状線管の密な増生を認めることを示した.技術的には,形態と遺伝子の対比を重視する立場からmaicro-dissection法にてDNAを抽出し, PCR-RFLP法,PCR-SSCP法,DNAシーケンス等を行っていた.隆起型がんと表面型がんの遺伝子学的な比較において,p53遺伝子産物の異常頻度に有意差を認めなかったが,表面におけるK-ras変異が明らかな低率を示した.DCCコドン201多型性の解析では,表面型がんで201Gly型の頻度が高い傾向にあった.また,RT-PCR法による孤発進行大腸がんのNF1(K-rasの活性化を負に制御するがん抑制遺伝子)mRNAの発現は隆起型がんにおいてGAP Related Domein I/II比の変化がみられた.カテプシンD蛋白の免疫組織学的検討では,がん組織で細胞質内局在が変化(基底膜上,びまん性,あるいは焼失するパターン)し,表面型大腸がんでは,特にびまん性ないし消失するパターンが多いことが明らかになった.K-ras codon 12, 13, 61, H-ras, N-ras について点突然変異の有無を検討し,その結果からK-ras codon 12の点突然変異とcox-2の上皮内過剰発現が相関し,そのことがポリープは発育に連鎖する機序を明らかにした.炎症性発がんモデルでは,F344ラットにTNB(150mg/kg),DMH(20mg/kg)を用いることにより表面型大腸がんを作成し,さらにNSAIDs(fenbufen, 40mg/kg)を投与してその腫瘍抑制効果を示した.
|