研究概要 |
甲状腺癌、甲状腺腺腫及び甲状腺炎症例の未固定凍結材料を使用して、1,telomeric repeat amplification protocal (TRAP) assayによるテロメラーゼ活性.2,サザーンブロッティングによるtelomere restriction fragment length (TRF)テロメア長を検索し、3,更に同一症例のホルマリン固定パラフィン切片を使用して、Ki-67免疫染色による細胞増殖能を観察し、また、4,臨床病理学的事項と対比して検索した結果、以下のごとき、結果を得た。 1、甲状腺乳頭癌においてはテロメラーゼ活性は61.5%が陽性であり、テロメラーゼ陽性の癌は低分化乳頭癌が多く、また甲状腺外伸展が多くみられ、Ki-67 labeling indexが高く、テロメラーゼ活性は癌化の機序というよりも癌の増殖と伸展に強く連関していることが判明した。またテロメラーゼ活性陽性癌のテロメア長は陰性癌のものと比較して有意に短縮していることもみとめられた。 2、中等度ないし高度の甲状腺炎においてもテロメラーゼ活性がみとめられ、これは浸潤するリンパ球に起因している可能性がつよいことが示された。 以上より、甲状腺腫瘍においてテロメラーゼ活性を検索することにより、腫瘍の伸展や予後、臨床的な扱いに関して有意義な情報が得られる可能性が示された。今後症例を増加することにより、慢性甲状腺炎に多くみられる甲状腺発癌が、一般的に想定されているテロメア長の短縮-テロメラーゼ活性の獲得-癌化という経路によっているか否かを明らかにする。
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