研究概要 |
昨年度はジゴキシゲニン標識cRNAプローブを用いたin situ hybridization(ISH)法を確立し、肺癌組織におけるinterleukin-6(IL-6)の発現を検討した。しかし、42例中1例にのみ腫瘍細胞内発現が認められただけであった。感度の上昇を目指す必要を感じた。これらから、今年度はin situ RT-PCR法を用いたIL-6 mRNAの同定法の確立を目指した。使用した材料はIL-6 mRNAのISHにも用いたヒト口腔癌OCC-1株(IL-6高産生)、ヒト子宮頸部癌Yumoto株(IL-6中程度産生)、ヒト胃癌MKN-1株(IL-6低産生)、ヒト悪性黒色腫SEKI株(IL-6産生なし)で、方法はPeters et al.(Am J Pathol 150:469-476,1997)の方法を基に最適条件をそれぞれのステップで検討した。最終的な方法はトリプシンで細胞を剥がし、オートスミアー装置を用いてスライドグラスに張り付け、4%PFAで4℃で20分間固定する。その後、1μg/ml ProteinaseK溶液で37℃で15分間蛋白を分解、さらにl00U/mlのDNase Iで37℃10分間処理する。RT-PCRにはパーキンエルマー社のGene Amp 1000装置を使用し、EZ rTth RNA PCR kitを用い、1回で逆転写反応とPCR反応を連続で行った。反応産物の標識には反応後、細胞標本をDEPC水、エタノールで洗浄、乾燥し、DIG-UTPを使用して1回PCRを行い標識した。その後、アルカリホスファターゼ標識抗DIG抗体、そしてNBT/BCIPを用いてIL-6mRNAの局在を可視化した。結果、同様の細胞標本を用いたISH法ではOCC-1株で10個に1個の割合で陽性であったが、この方法では全ての細胞で強く発現が認められた。さらに、ISH法では検出できなかった低発現株MKN-1でもほとんどの細胞で弱く発現が認められた。非産生株ではISH、in situ RT-PCR法とも陰性であった。同時に行っているcompetitive RT-PCR法の結果から、通常のISH法に比べて、約100倍程度感度を上げることが可能となった。今年度はこの方法を肺癌組織に応用する。
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