研究概要 |
Ewing肉腫/PNET腫瘍群は思春期に好発する難治性腫瘍であり、その起源、腫瘍発生機構は未だ明らかでない。本腫瘍は特徴のない未分化な細胞からなり、その病理確定診断は困難である。一方、本腫瘍には特徴的な染色休転座t(11;22),t(21;22),及びt(17;22)があり、それに由来してEWS遺伝子(22ハ番染色体)と、Ets gene familyであるFLI-1(11番染色),ERG(21番染色体),ETV-1(7番染色体)とのキメラ遺伝子の発現が報告されている。本研究は、腫瘍特異的な新たなキメラ遺伝子を単離、解析すること、またこれらのキメラ遺伝子を遺伝子診断に応用することを目的として行った。 30例のEwing肉腫/PNET腫瘍群の手術症例及び16種の細胞株からtotaI RNAを抽出して、RT-PCR、及び塩基配列決定を行った結果、手術症例の23例、及び細胞株の12種から既知のキメラ遺伝子を検出した。その内訳は、EWS-FLI-1が29例、EWS-ERGが6例であった。また、これらのキメラ遺伝子のサブタイプを塩基配列に基づいて行った。機知のキメラ遺伝子を検出した症例の病理組織学的な特徴とキメラ遺伝子のサブタイプとの関連を詳細に解析したが、明らかな相関関係は認められなかった。 さらに既知のキメラ遺伝子を同定できない症例については、あらたなキメラ遺伝子が存在する事を予測し、EWScDNAをProbeとしてサザン解析を行った。その結果、一例の手術摘除組織(ST480)及び同例から樹立された細胞株NCR-EW3において、EWS遺伝子に再構成を認めた。本例ではEWS遺伝子との新たな融合遺伝子が生じている可能性が高い想定し、それらをクローニングする目的で解析を進め、nested PCR法により、新たなキメラ遺伝子EWS-EIAFを単離した。また、EWS-ElAF cDNA全塩基配列を決定し、同キメラ遺伝子はEWS遺伝子エクソン7と、ElAF遺伝子とのキメラ遺伝子でin frameであり、Ets DNA binding domainが保持されていることを確認した。その後同腫瘍から樹立した細胞株、NCR-EW3より抽出したRNAを用いて、ノザン解析を行い、EWS-EIAFの発現を確認した。
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