早期部分奇胎(妊娠週例12週ないしそれ以下)と後期部分奇胎(妊娠週例12週を超える)について臨床病理学的に比較検討を行った。1981年より18年間、当大学付属病院および関連病院における100例(1981-1990、37例、1991-1998、67例)部分奇胎を対象とした。患者年齢:17-43歳(平均、29歳)、妊娠週齢:早期部分奇胎、9.6週;後期部分奇胎、14.8週。早期部分奇胎の頻度:1981-1990(23/37、62%)よりも1991-1998(57/63、90%)において高い。内膜掻爬前の奇胎診断:早期部分奇胎、4/80;後期部分奇胎、1/20。Flow cytometryによるDNA ploidyの検索:早期部分奇胎70例、後期部分奇胎19例がtriploid、早期部分奇胎5例がaneuploid、その他6例はdiploid。組織像:最大絨毛経の平均(mm)は、早期triploid部分奇胎、早期diploid部分奇胎、2.6、早期aneuploid部分奇胎、2.6、後期triploid部分奇胎、3.4。Cistern Formation:早期部分奇胎、79/80、後期部分奇胎、20/20。ScallopingとFocal syncytiotrophoblastic hyperplasia:早期部分奇胎、80/80、後期部分奇胎、20/20。後期部分奇胎において早期部分奇胎よりも絨毛径がより有意に高い(p=0.046)、間質の線維化が高度(p=0.003)以外に両者の組織像に差異は無いと思われる。 早期部分奇胎と水腫性流産の病理学的鑑別は、後者においては、肉眼的な腫大は稀で、組織学的な水腫程度は絨毛により種々であり、部分胎児で見られるtwo population villiと異なる。また絨毛の輪郭は円形、卵円形であり、syncytiotrophoblastic hyperplasiaはない。早期部分奇胎は現在、以前よりも多い事がわかる。超音波診断の導入により胞状奇胎を含む流産が以前に比べて早く掻爬されていることに起因すると考えられる。しかし、内膜掻爬前の奇胎診断は5%の症例しかついておらず、多くの部分奇胎は臨床診断が極めて困難であり、病理学的検索が必須である。
|