発生頻度の高い間葉系悪性腫瘍である分化型脂肪肉腫の腫瘍発生に関わる分子機構をarchitectural factorの一つであるHMGI-Cの遺伝子の異常発現に着目して解析した. 1.分化型脂肪肉腫におけるHMGI-C遺伝子の発現亢進 (1)HMGI-C遺伝子の蛋白レベルでの発現亢進 HMGI-C-GST融合蛋白をウサギに免疫し、抗ヒトHMGI-Cポリクローナル抗体を作製した. (i)免疫組織化学による各種肉腫組織でのHMGI-Cの発現解析 分化型脂肪肉腫20例全例で高度の発現亢進が観察された.脱分化型部では発現は陰性化していた.脂肪肉腫粘液腫型およびMFHをはじめとする他の肉腫組織にはHMGI-C蛋白の発現は認めなかった. (ii)ウェスタンブロット法による発現解析 分化型脂肪肉腫組織において分子量約20kDaのHMGI-C蛋白の発現が認められた. (2)分化型脂肪肉腫におけるHMGI-C遺伝子の転写亢進 (i)nested RT-PCR法によるHMGI-C遺伝子のメッセージレベルでの発現解析 胎生6〜12週のヒト胎児を陽性対照にたて、nested RT-PCR法にてHMGI-C遺伝子(exon1〜5を含む)の発現を解析した.分化型脂肪肉腫症例ではHMGI-C mRNAの発現の見られるものと見られないものが存在した. (ii)In situ hybridization法による解析 分化型脂肪肉腫腫瘍細胞にHMGI-CmRNAが同定された. 2.HMGI-C遺伝子の発現亢進機構の解析 HMGI-C遺伝子内における融合遺伝子の形成、3'UTR部のAUUUAモチーフの異常、コピー数の増加によるHMGI-C遺伝子の発現亢進の可能性が上記結果より推測され、(1)、(2)に関し現在精力的に解析中である. (1)3'RACE法によるHMGI-C遺伝子の構造異常の解析 (i)RT-PCR陰性例におけるHMGI-C遺伝子exon3-4間のintronでの相互転座 (ii)RT-PCR陽性例におけるHMGI-C遺伝子3'UTR部のAUUUAモチーフの異常 (2)RT-PCR陽性例におけるHMGI-C遺伝子のコピー数のサザンブロット法による解析
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