発生頻度の高い間葉系悪性腫.瘍である分化型脂肪肉腫の腫瘍発生に関わる分子機構をarchitectural factorの一つであるHMGl-C遺伝子の発現冗進機構とHMGl-C遺伝子発現の間葉系腫瘍発生における役割に注目し解析した。 1. 分化型脂肪肉腫におけるHMGl-C遺伝子の発現亢進機構の解析 (1) 分化型脂肪肉腫におけるHMGl-C遺伝子の転写亢進 hHMGl-C遺伝子exon15'UTRとexon35'UTRにprimersを設定し、nestedRT-PCRで発現を調べた.分化型脂肪肉腫症例ではヒト胎児組織におけるmRNA発現と同様想定されたサイズのPCR産物が得られた。シークエンスでも正常構造のtranscriptであることが確認された. (2) Southern blot法による検討では、分化型脂肪肉腫におけるHMGl-C遺伝子の有意な増幅は観察されなかった. (3) 3'RACEによるHMGl-C遺伝子transcriptのクローニングとシークエンスによる解析を現在行っているが、現在まで明かなキメラ遺伝子形成などHMGl-C遺伝子の構造異常は見つかっていない。 (1)-(3)の結果から、HMGl-C遺伝子3'UTR部のAUUUAモチーフの異常あるいはプロモーター領域の構造異常が推測され今後解析を加える予定である。 2. HMGl-C+/+fibroblastはほとんどtransformしないのに対して、HMGl-C-/-は継代培養により高頻度にtransformした.このtransformationはHMGl-C cDNAの導入にて阻止できた.間葉系腫瘍におけるHMGl-Cの蛋白レベルの発現解析の結果と総合すると、HMGl-Cの活性化は、間葉系腫瘍の高悪性肉腫へのプログレッションを阻止する役割を演じている可能性が示唆された.
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