研究概要 |
前年度,hnRNP(heterogeneous nuclear ribonucleo-protein;核内不均一リボ核蛋白)A2/B1蛋白には,exon2およびexon9のalternamative splicingにより,A2,B1,BO^a,BO^bの4種のアイソフォーム蛋白が存在することが明らかにした.そこで各hnRNPA2/B1蛋白分子の機能の差を明らかにすることを目的として,テロメア配列DNAとの関係に着目し検討した. 1. hnRNP A2/B1蛋白の各アイソフォームの組織発現 hnRNP A2/B1蛋白の組織内発現の差を,mRNAおよび蛋白レベルで検討した結果,exon9の欠損するBO^a及びBO^b蛋白は,精巣に組織特異的に発現されること,exon2の欠損するA2及びBO^a蛋白は,mRNAおよび蛋白レベルでの発現量に差があることを明らかにした. 2. hnRNPA2/Bl各アイソフォームと一本鎖テロメアDNAとの関係 組み換え蛋白を作製し,各アイソフォームの一本鎖テロメアDNAに対する結合を比較解析した結果,各蛋白はテロメアDNAの反復配列最小単位であるTTAGGGの6塩基に結合し,その結合強度は,A2=BO^a≪B1≦BO^b蛋白の順で,BlおよびBO^bの結合平衡定数は,1.85X10^<-7>Mよび2.15X10^<-7>Mであった. 3, テロメアDNA維持機構との関係 BO^b蛋白は,テロメア反復配列に結合して,ヌクレアーゼからの一本鎖テロメアDNAの保護作用を示すこと,また,in vitroのテロメア伸長反応を亢進させることを明らかにした. 以上から,hnRNPA2/B1蛋白,特にBO^b蛋白は,mRNAの代謝・輸送のみではなく,脊椎動物におけるテロメア維持機構に深く関係しており,生理的なテロメア結合蛋白の有力な候補であると考えられた.
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