研究概要 |
昨年度までにNuc-KOB6マウスのMRL/1prマウス(野生型)への戻し交配4代目で結節性多発動脈炎(PN)様血管炎が〜100%発症することを確かめた。今年度の解析で当該マウスのPN様血管炎は主に腎に発生し、病理組織学的にはヒトの所謂古典的PNの1.変性期(初期)、2.急性炎症期、3.肉芽期、4.瘢痕期に相当する所見がみられることを明らかにした。当該マウスの血清学的特徴は著しい免疫複合体の上昇であるが、昨年度の腎免疫複合体の解析から、アクチンおよび今迄知られていなかったargininosuccinate synthase(ASS,アルギノコハク酸合成酵素)を同定した。今回組換えASSを用いたELISAで血清中の抗ASS抗体価が血管炎の活動性とよく一致することをつきとめた。ASSは血管の代謝に重要な酵素であることから、ヒトのPN様血管炎、特に現在注目されている急性進行性糸球体腎炎(組織学的には半月体形成、血清学的には抗好中球細胞質抗体、ANCAの出現を特徴とする)と肺胞出血で急死を遂げる顕微鏡的多発血管炎(MPA)の診断・治療の確立へのASS-抗ASS抗体系の貢献が期待される。当該マウスは半月体形成、抗好中球細胞質抗体(ANCA)も高頻度で見られることからPN様血管炎よりもMPAに近いモデルになっていることを付記する。
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