レトロウイルス誘発性疾患のモデルとしてマウスフレンド白血病ウイルスの系を用いて遺伝子治療モデルの開発を目的に実験を行った。導入遺伝子は白血病ウイルスに抵抗性を示す宿主遺伝子のFv-4^r遺伝子である。 1) Fv-4^r遺伝子導入骨髄細胞を用いたキメラマウスの作製 C3Hマウス(Fv-4^r遺伝子を持たないマウスでFLV感受性)の骨髄細胞にFv-4^r遺伝子を導入した後、同系のC3Hマウスに移植してFv-4^r-C3H→C3Hキメラマウスを作製した。導入されたFv-4^r遺伝子は造血系細胞に発現していたが、発現の強さは個体によってまちまちで、本来このFv-4^r遺伝子を持っているC4Wマウス(FLV抵抗性)の発現の強さと比較すると、10から20%位の発現をしている個体が大多数であった。 2) 発現効率の良い遺伝子導入キメラマウス作製技術の開発 遺伝子発現効率の向上と発現細胞の普遍化を目的として、遺伝子導入に用いるベクター及び導入時の培養条件を設定し、C4Wマウスの20から30%以上の発現を伴うキメラマウスを得ることに成功した。 3) 遺伝子導入マウスのウイルス抵抗性に関する予備実験 Fv-4^r-C3H→C3Hキメラマウスのウイルス(FLV)接種に対する抵抗性について検討した。低用量(1x10^3PFU)のウイルス接種に対して、C4Wマウスの10から20%のFv-4^r遺伝子発現を示すキメラマウスでは、C3Hマウスに比較して有意な延命効果が認められたものの、抵抗性を得るには至らなかった。30%以上の発現のあったキメラマウスの個体数はごく少数だったが、抵抗性を獲得していた。しかし、ウイルスの用量を 10倍量(lx10^4PFU)にすると延命効果は認められなかった。後半の研究で作製した高発現系のキメラマウスを用いて、さらに強い抵抗性の獲得に向けた実験を検討中である。
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