1.ラット皮膚創傷治癒過程におけるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)遺伝子の発現をノーザンブロットおよびin situ hybridization法で、また発現しているゼラチン分解能のある酵素の同定をザイモグラフィを用いて検討した。創傷治癒過程に発現した6つのMMP遺伝子のうち、膜型MMP1型(MT1-MMP)、ゼラチナーゼA、ストロメリシン3遺伝子は創傷間質、特に肉芽組織や瘢痕組織に発現し、発現の強弱に違いはあるものの、その時間的推移における発現パターン、発現場所は似ていた。ストロメリシン1、ゼラチナーゼB、コラゲナーゼ3遺伝子は創傷部に近い上皮基底細胞に主に発現し、創傷初期から強く発現しており、再上皮化が完了するとこれらの遺伝子の発現はみられなくなった。ゼラチン分解能のある酵素、ゼラチナーゼAおよびゼラチナーゼBのそれぞれの活性型の酵素はそれぞれMT1-MMP、ストロメリシン1遺伝子の発現パターンに類似して創傷部で同定された。 2.ラットMMPのリコンビナント酵素をCOS-1細胞に発現させ、それらの酵素の機能、MMP間の相互作用を検討したところ、MT1-MMPはゼラチナーゼAを、ストロメリシン1はゼラチナーゼBを活性化することが確認された。さらに、MMPの生理的インヒビターで、創傷治癒の過程で遺伝子発現が確認されたTIMP-1、-2、-3をそれぞれ共発現させてゼラチナーゼAおよびゼラチナーゼBの活性化におよぼす影響をみたところ、MT1-MMPによるゼラチナーゼAの活性化にTIMP-1は影響を及ぼさないが、ゼラチナーゼBの活性化は完全に抑制することがわかった。しかしながら、TIMP-1、-2、-3は創傷治癒過程でそれぞれ異なる発現パターンを示し、in vitroではほぼどのMMPの働きも抑制したが、in vivoでは異なる役割を担っていることが示唆された。
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