研究概要 |
まず、リンパ管内皮細胞を得るために犬の胸管内皮細胞を剥離培養して、数回の経代を経たものをその後の実験に供した。 (1) 培養リンパ管内皮細胞のmRNAを抽出後、動物間でも保存性の高いCytoplasmic domainにDegenerate primerを設定しRT-PCRを行った。その結果、リンパ管内皮細胞でも予想される大きさにPCR productが観察された。 (2) 予想される大きさのPCR productをPCR II TOPOベクターに組み込んで、recombinantの単一コロニーを採取し、sequenceを行ってカドヘリンらしいクローンを拾った。 (3) その結果人のカドヘリン5とカドヘリン10に相同性の高いクローンが得られた。 (4) カドヘリン5に対する抗体で、培養犬胸管内皮細胞を染色するとCell contactの部位に発現が見られた。 (5) カドヘリン5に対する抗体でWestern blottingを行うと、HUVEC(人臍帯静脈内皮細胞よりも少し小さな135kDaのシグナルが得られた。 (6) カドヘリン5のCytoplasmic domainのsequenceを犬と人で比較すると、homologyは78%で犬のほうがやや短く、これが分子量の差になっているものと思われた。fig (7) 一方、カドヘリン10のcharacterizationは現在までのところ乏しく、胎生期に脳での発現が報告されているが、血管やリンパ管内皮細胞での報告はない。 (8) そこで、種々の培養細胞でカドヘリン10のmRNAの発現をNorthern blottingで観察したところ、HUVEC、DTECの他にGlioma,glioblastoma,Hela,MDBK等で発現があり、特にglioma,glioblastomaで発現が強かった。 (9) 人のカドヘリン10のcDNAの全長を得るため、人のカドヘリン10のCytoplasmic domainをprobeとして、HUVECのcDNA libraryをスクリーニングした。 (10) その結果、全長2.4kbのcDNAが得られた。 ChickのCadherin 10との相同性は96.1%と高く、Cadherin 10のHuman homologueと考えられた。 以上より、得られたクローンはカドヘリン5と10と考えられた。リンパ管内皮細胞はカドヘリンの種類としては血管内皮細胞と同じ性格を有しているが、いままでに報告のないカドヘリン10の発現がリンパ管内皮細胞にもみられた。カドヘリン10は内皮細胞だけではなく、幅広い組織内分布が予想され、各細胞に共通の性格があるものと推測された。
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