正常のc-kitレセプター・チロシンキナーゼ(KIT)はstem cell factor(SCF)が結合すると細胞外ドメインで二量体を形成し自らを燐酸化することによりシグナル伝達の第一歩を踏み出す。一方、KITにはSCFの結合がなくても自らを燐酸化し活性化する機能獲得性突然変異が存在し、この突然変異は傍細胞膜領域型(JTM)とキナーゼ領域型(K)に大別される。昨年度、傍細胞膜領域変異型KIT(JTM-KIT)の活性化は細胞外ドメインの構成的な二量体形成と関係があるがキナーゼ領域変異型KIT(K-KIT)の活性化には細胞外ドメインは必須でないことを示した。そこでK-KITが単量体として作用するのか或いは細胞内ドメインで会合する活性をもつのかどうかしらべた。正常なKITと細胞外ドメインを欠失させたK-KITを同時に発現させた細胞のlysateをKITの細胞外ドメインを認識する抗体で免疫沈降すると、正常なKITばかりでなく細胞外ドメインを欠失させたK-KITも検出された。K-KITの細胞外ドメインをマクロファージ・コロニー刺激因子(M-CSF)のレセプターであるFMSに置換したFMS/K-KITキメラレセプターとKITを同時に発現させた細胞のlysateをFMSを認識する抗体(抗FMS抗体)で免疫沈降すると、FMS/K-KITキメラレセプターばかりでなくKITも検出された。一方、正常なKITの細胞外ドメインをFMSに置換したFMS/KITキメラレセプターとKITを同時に発現させた後M-CSFで刺激した細胞のlysateを抗FMS抗体で免疫沈降すると、FMS/KITキメラレセプターだけしか検出されなかった。K-KITは細胞内ドメインにおいて会合する活性をもち、K-KITは独自の増殖シグナルを有する可能性がある。
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