研究概要 |
本研究は炎症の場における細胞障害と炎症に際してはしばしば経験される発癌率の高さを鉄とフリーラジカルの一種である一酸化窒素(NO)との関連から検討することを目的とする。 我々は5週齢の雄ラットに2.5%カルボニル鉄添加食を3週間経口摂取することによって鉄過剰動作を製作した。腸内細菌巣を正常化するため,1週間正常食を摂取させた後実験に供した。解剖所見では,肝臓における非ヘム鉄の沈着が著明に認められ鉄過剰のモデル動物として適当であることが確認された。しかしながら,通常の鉄染色レベルでの検討では,脾臓を除いたそれ以外の臓器においてその差異は明瞭ではなかった。消化管内の鉄過剰食は完全に排出されていた。この動物にリポ多糖(LPS)を0.5mgLPS/Kg体重の投与量にて腹腔内に1回注射した。HE染色による光学顕微鏡的観察では,鉄過剰群において肝細胞壊死巣が数および大きさとも顕著なように思われた。その他には著変なかった。酵素抗体法にて各種臓器での誘導型の一酸化窒素合成酵素(iNOS)の発現を検討したところ,基本的な経時的変化は鉄過剰群およびコントロール群にて明らかな差は見られなかった。しかしながら鉄過剰群の方がその発現が強くかつ長く持続しているように思われた。半定量化して詳細に検討する必要があると思われる。特に肝臓の壊死巣周囲にマクロファージが長期に存在しており,その部位ではiNOSの発現が持続していた。電子スピン共鳴法を用いてLPS投与後における一酸化炭素配置ヘモグロビン(Hb-NO)の動態を検討したところ,Hb-NOはLPS投与後6時間にピークとなり,その後減少して48時間後にはほとんど検出されなくなった。またその生成量は鉄過剰群において強い傾向が見られた。動物数を増やすとともに最終産物である総窒素酸化物量を測定して,その動態をさらに詳細に検討する必要があると思われる。
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