まず、in vivoでトリプターゼとキマ-ゼの共同作用が見られるかどうかを調べるために、両プロテアーゼを添加して30分間温置したヒト血漿を色素を静注したモルモットに皮内注射し血管透過性亢進活性を測定した。トリプターゼ60 nM、200 nMに対して、キマ-ゼは各々 30 nM、 100 nMまで増強作用を示し、より高濃度ではその作用は減少した。キマ-ゼの増強作用はその酵素活性とトリプターゼとの濃度比に依存していたが、温置時間による違いはみられなかった。しかし、キマ-ゼのみでは血漿から血管透過性亢進活性を産生することはできなかった。次に、キマ-ゼのトリプターセ血管透過性亢進活性増強作用の機序を明らかにするために欠損血漿を用いて血管透過性亢進活性増強作用を調べると、この作用はキニノーゲン欠損血漿では認められなかったので、キニノーゲンからキニンを産生する過程での共同作用と考えられた。そこで、精製低分子および高分子キニノーゲンを用いて両プロテアーゼによる血管透過性亢進活性産生を測定すると、トリプターゼの両キニノーゲンからの血管透過性亢進活性産生をキマ-ゼは亢進することがわかった。以上の結果から、アレルギー反応時などに肥満細胞から放出されるトリプターゼはキニノーゲンからのキニン産生による血管透過性亢進を引き起こすが、この作用は同時に肥満細胞から放出されるキマ-ゼによって増強されることが示唆された。 一方、トリプターゼの高分子キニノーゲンからの血管透過性亢進活性産生に対するヒト好中球エラスターゼの効果を調べると、エラスターゼにも増強作用があることがわかった。興味あることに、エラスターゼ自身にも高分子キニノーゲンからの血管透過性亢進活性産生作用があることが判明した。基質特異性からエラスターゼはブラディキニン以外のキニンを産生していると推測され、現在同定中である。
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