研究概要 |
エイズの動物モデルとして確立されているマウスエイズ(MAIDS)を用い免疫不全症に対する治療法開発に向けての基礎実験を行った。化学療法剤としてAZT,(R)-9-(2-phosphonylmethoxypropyl)adenine[PMPA]および9-(2-phosphonylmethoxyethyl)adenine[PMEA]の逆転写酵素阻害剤を用い、免疫補充療法としてウイルス抗原をパルスした樹状細胞(DC)とこのDCにより活性化されたウイルス抗原特異的CD8陽性キラーT細胞を用い、免疫応答を正常に保つ際に根幹的役割を果たす濾胞樹状細胞(FDC)と、胚中心の形成・維持を目標とした。上記3剤のMAIDS発症予防効果を検討すると、PMPAおよびPMEAはウイルス感染後5週までMAIDSの発症を完全に阻止した。しかし、感染後9週を経過するとPMPAのみがMAIDSの発症を阻止することが可能であった。これら発症阻止マウスではリンパ球の機能は充分に保たれ、FDCは正常に保持され胚中心の腫大はなく正常構造が保たれていた。従って、PMPAなどある種の抗ウイルス剤は予防的に極めて有効であると考えられた。しかし、ウイルス感染後24時間を経過しウイルス抗原がリンパ節内に発現してからPMPAの投与を開始しても全く無効であり、抗原パルスしたDCを補充しても有効なキラーT細胞を誘導することができなかった。しかし、ウイルス特異的CD8陽性キラーT細胞をリンパ節へ直接的に投与すると短期間においてのみ有効性が確認できた。CD8陽性キラーT細胞を選択的に長期間活性化するメディエターが有効と考えられた。
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