研究概要 |
神経初期分化過程におけるギャップ結合細胞間コミュニケーション(GJIC)の変化を明らかにする目的で、多分化能を有するマウスembryonic stem (ES)細胞をin vitroで神経細胞に分化誘導する系を確立し、GJICを検討した。 1.マウスES細胞を用いたin vitro神経系分化モデル作成 (1)未分化ES細胞を8日間浮遊培養、そのうち後半の4日間All-trans retinoic acid(500nM)で処理し、その後接着培養を行うことにより、接着培養6日目に90%以上のembryoid bodyで、neuriteの形成するモデルを確立した。 (2)神経系特異的マーカーの免疫組織化学的検討 接着培養1日目では、神経上皮の段階から発現するA2B5は陽性であったが、分化した神経のマーカーであるmicrotubuleーassociated protein 2(MAP2)は、陰性であった。 接着培養3日目以降は、MAP2,neurofilament M subunit、β-tubulin の陽性シグナルを認めた。 2.In vitro 神経系分化モデルにおけるギャップ結合タンパク質(connexin,Cx)の発現の免疫組織化学的検討 神経への分化を示した細胞には、Cx26の発現が認められた。 3.In vitro神経系分化モデルにおけるマイクロインジェクション・トレーサー移行法を用いたGJICの測定 接着培養1日目のA2B5陽性コロニーでは、コロニー全体へのトレーサーの広がりを示したが、A2B5陽性コロニーと周辺の扁平なA2B5陰性細胞との間にはGJICが認められなかった。接着培養3日目以降では、トレーサーの広がりはコロニー内の一部に留まった。以上の結果より、in vitroでの神経細胞への初期分化過程において、GJICのコンパートメント形成と機能の低下が生じることが明らかとなった。
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