1.FGF8遺伝子制御機構の解析 リボプローブマッピング法を用いた解析により5'近傍に転写開始点が複数存在することが明らかになった。周囲にはTATA配列やCAAT配列はみられないが、かわってG、Cに富む配列が認められた。次に、ルシフェラーゼ遺伝子をレポーターとし上流域をそれぞれ6kb、2.5kb、0.8kb、0.3kbづつ含んだコンストラクトを作製した。それぞれのコンストラクトを型のごとくリポフェクタミン法にて遺伝子導入し、細胞溶解液中のルシファラーゼ活性を測定した結果、上流0.3kb中にプロモーター領域が存在していることが明らかとなった。現在、この領域についてさらに細かなコンストラクトの作製を行い詳細なプロモーター領域の決定を行っている。この領域は非常にG、C含量が高くSp-1などの転写因子の結合が推定される。今後、ゲルシフト法などによってDNA結合蛋白の解析もあわせて行っていく予定である。 2.抗FGF8抗体を用いて病態解析 N末部に相当する合成ペプチドを免疫原としてFGF8に対するモノクロナール抗体の作製を行った。この抗体はFGF8に特異的に交叉しさらに中和活性を有していた。病理組織標本を用いた免疫組織化学的検索では正常乳腺組織での発現が認められ、また、前立腺癌や各種の乳腺腫瘍で高頻度に発現していることが明らかとなった。一方、神経組織や内分泌組織でも発現がみられ、種々の病態に関与している可能性が考えられる。今後、ELISA法による血中、組織中のFGF8の定量化を試み、各種病態における量的変化を解析する予定である。
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