1、 アンドロゲン非依存性シオノギ癌細胞が産生する分化、増殖因子の同定 アンドロゲン非依存性シオノギ癌はin vivoでは高頻度に軟骨成分を認め間葉系細胞に対する分化誘導因子を産生している可能性が考えられる。そこで、アンドロゲン非依存性シオノギ癌細胞株培養上清中の活性因子をNlH3T3細胞に対する増殖を指標として精製を行った。培養上清を濃縮後、ヘパリンセファ口ースカラムにて分画すると増殖活性は0.3MNaClにて溶出された。さらに、銅イオン親和性力ラムにて増殖活性は10mMイミダゾール分画に溶出された。この分画についてウェスタンブロット法にて増殖因子との交叉性を検討するとアクチビンβAと明瞭に交叉した。一方、部分精製した増殖活性はアクチビン結合蛋白であるフォリスタチンにて完全に抑制された。また、RT-PCR法にてアクチビンβA、βBの発現を確認した。さらに、ウシ卵胞より精製したアクチビンを添加するとNlH3T3細胞の増殖が促進した。以上によりアンドロゲン非依存性シオノギ癌細胞がアクチビンを産生していることが明らかになった。現在、アクチビンの分化誘導能の検索を行っている。 2、 神経系分化に対するFGF8の作用 前年度の研究にて作製した抗FGF8抗体を用いマウス胎児におけるFGF8の発現を検討したところ脊髄後根神経節、交感神経節、腸管周囲筋層間神経細胞を含めた末梢神経系での発現が認められた。また、これらの細胞の腫瘍である神経芽細胞腫でも高頻度にFGF8の発現が認められた。さらに、神経芽細胞腫より樹立された細胞はSK-N-MCにFGF8を作用させると細胞突起の伸長が観察された。
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