1.FGF8遺伝子制御機構の解析 FGF8遺伝子5'近傍に結合部位がみられたEgr-1、Ap-2について発現ベクターに組み込みFGF8プロモーター活性の変化を検討するとともにSC-3細胞にstableに導入し増殖活性の変化を検討した。FGF8のプロモーター活性はEgr-1或いはAp-2導入に伴い著明に上昇した。しかしながら、Egr-1をstableに導入したSC-3細胞ではアンドロゲン刺激による増殖活性は優位に抑制された。一方、Ap-2を導入した細胞では増殖活性に大きな変化はみられなかった。このように、FGF8遺伝子の発現は複雑に制御されており、SC-3細胞全体の制御システムを反映したレポーターコンストラクトを開発していく必要がある。 2.神経細胞分化とFGF8 ヒト神経芽細胞腫SK-N-MC細胞においてFGF8が神経突起形成促進能を有することを明らかにしてきたが、今回、細胞増殖についてアクチビンと比較検討した。FGF8はSK-N-MC細胞の増殖を抑制したがアクチビンは増殖を促進した。神経系においてはFGF8とアクチビンが拮抗的に作用していると考えられる。また、マウス奇形癌細胞株P19はレチノイン酸処理により神経細胞へ分化することが知られている。この系におけるFGF8の関与をRT-PCR法にて検討した。神経分化を制御する転写因子であるNeuro Dは神経分化に伴い高レベルに発現が確認されたが、予想に反して、FGF8は未分化なP19細胞において強く発現し神経細胞へ分化すると発現は消失した。奇形癌における神経分化誘導はin vivoでの神経分化と異なっている可能性が考えられる。
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