最近分子生物学の進歩により遺伝子のレベルで新しいウイルスが解明され、その構成蛋白質やそのウイルスの性状が推察されるようになったが、構造が確認できていないウイルスがある。ウイルス粒子の形態構造を知ることは、そのウイルス粒子の基本的な性状、分類的位置関係、さらにその感染様式などの予測に重要である。そこで、形態未知のウイルスを明らかにする手段として電顕的in situハイブリダイゼーション(EM-ISH)によるウイルス核酸同定法を確立することを目的とし、次の項目について行った。 1. EM-ISHを確立するため、Epstein-Barrウイルス感染細胞中のEBV-DNAの存在をEBV BamHI-Wをプローブとして用い、低温樹脂包埋切片上でのEM-ISHの条件および検出法を確立し、感染細胞内ウイルス前駆体の存在を明らかにした。 2. 低温樹脂包埋切片のコントラスト増強のため、ルテニウムレッドとOsO_4混合液で免疫反応後に染色すると、コントラストの良いウイルス粒子像が得られた。 3. HIV粒子中のウイルス遺伝子の存在をこのEM-ISH ISH法で認めた。 4. アデノウイルス感染細胞内のウイルス粒子の結晶様配列は、の基本的条件および検出法を確立するのに、有用な試料であることがわかった。 5. PCR装置を用いて、ビオチン高標識プローブを作製すると、アデノウイルス粒子配列で1コピーまたは数コピーの遺伝子に1標識できるEM-ISHが確立できた。また、HIVでも検出率が向上した。 6. 遺伝子配列が既知のボルナ病ウイルスの形態および形態形成を免疫電顕で明らかにした。さらに、EM-ISHで、遺伝子的にも明らかにしようとしている。
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