子宮二段階発がんモデルをもちいた子宮癌発生機序の解析

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09670244
• 研究機関: (財)佐々木研究所
• 研究代表者: 高橋 正一 佐々木研究所, 病理部, 主任研究員 (50132767)
• 研究分担者: 吉田 緑 佐々木研究所, 病理部, 研究員 (70201861) ; 安藤 進 佐々木研究所, 病理部, 研究員 (10240433) ; 前川 昭彦 佐々木研究所, 病理部, 部長 (30106182)
• キーワード: 二段階発癌 / 子宮癌 / アスコルビン酸 / マウス

研究概要

本研究では、N-ethyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine(ENNG)と17β一エストラダイオール(E_2)によるマウス子宮二段階発癌法を用い、子宮腺癌発生に対し癌誘発阻害物質と考えられるアスコルビン酸(ASA)について同様な検討を行いASAの影響について検索した。
チャールスリバー社のACIマウスを4週齢時に購入し、7週齢より24時間室内照明下で飼育して性周期停止マウスを作成して、1群20匹づつの4群(1群:ENNG投与群、2群:ENNG+E_2投与群、3群:ENNG+ASA投与群、4群:ENNG+E_2+ASA投与群)に分けた。9週齢時よりコレステロール粉末に混ぜた0.5%E_2ペレットを背部皮下に埋植し、10週齢時に経膣的に片側子宮腔内にENNGを単回投与(12.5mg/kg)した。ASAの投与は、0.3%ASA水溶液を11週齢時より実験終了まで自由摂取させた。実験はENNG投与後15週間観察し、全動物を屠殺・剖検し生殖器を中心に病理学的検索を行った。
子宮腺癌の発生は1〜4群でそれぞれ5、55、10及び80%であった。ENNG+E_2投与群(2群)ではENNG投与後15週で子宮腺癌が高率に発生し、子宮癌発生に対するE_2のプロモーション作用が示された。一方、2群にASAを加えた4群ではその発癌率は2群に比し有意差は無いものの約1.5倍の高値となり、E_2によるプロモーション効果がASA投与により増強される結果となった。一方ENNG+ASA投与群では、プロモーション作用は見られなかった。また子宮重量はE_2投与群である2及び4群で高値を示し、E_2投与による影響が観察された。1,2-dimethylhydrazineを用いて誘発したマウス子宮肉腫にASAを投与すると、E_2によるプロモーション効果を強く抑制する事が知られており、今回の結果、子宮の腺癌と肉腫におけるE_2のプロモーション作用の機序が異なる事が示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Ando-Lu, J., et al.: "Strain-differences in proliferative activity of uterine endometrial cells in Donryu and Fischer 344 rats." Exp.Toxic.Pathol.50. 185-190 (1998)
• [文献書誌] Nisiyama,K., et al.: "Initiating and promoting effects of concurrent oral of administration of ethylenethiourea and sodium nitrite on uterine endometrial adenocarcinoma development in donryu rats." In vivo. 12. 363-368 (1998)
• [文献書誌] Sasahara,K., et al.: "Granular cell foci of the uterus in donryu rats." J.Comp.Path.119. 195-199 (1998)
• [文献書誌] Yosida,M., et al.: "Inhibitory effects of uterine endometrial carciogenesis on Dinryu rats by tamoxifen." Cancer Lett.134. 43-51 (1998)
• [文献書誌] Kunitoshi,M., et al.: "Promoting effects of kojic acid due to serum TSH elevation resulting from reduced serum thyroid hormone levels on development of thyroid proliferative lesions in rats initiated with N-bis(2-hydroxypropyl)nitrosamine." Carcinogenesis. 20. 173-176 (1998)
• [文献書誌] Katsuda,S., et al.: "Estrogen receptor mRNA in uteri of normal estrous cycling and ovariectomized rats by in situ hybridization." Proc.Soc.Exptl.Biol.Med.in press. (1998)