研究概要 |
scidマウスは、胸腺上皮細胞は正常であるがリンパ球の幹細胞に異常があるため、TおよびB細胞が存在しない。このマウスにラットの骨髄細胞を注射することにより、同マウスにラット由来の免疫系が構築されるかを検討した。そのためにscidマウスに250radsのX線を照射後、成獣F344ヌードラットの骨髄細胞を静注し(BMTscidマウス)、数ヶ月後に胸腺や末梢リンパ臓器における細胞の由来やリンパ球表面抗原の発現を検討した。その結果BMTscidマウスの胸腺にはラット由来のT前駆細胞が移住してくることが明らかとなった。すなわち胸腺リンパ球はラットCD4,CD8,CD3やT細胞レセプターを正常ラットなみに発現していた。やがて末梢にもラット由来のT細胞が出現した。またラットIgGを発現しているラット由来のB細胞も末梢に出現した。すなわち、BMTscidマウスは体内に異種であるラットの免疫系が存在するマウスと見なすことができる。 次にBMTscidマウスの免疫能を検討した。BMTscidマウスに羊赤血球を注射して、in vitroでPFC法により抗体産生能を検査したところ、非常に弱い反応しか得られなかった。またBMTscidマウスの脾細胞をresponderとしてリンパ球混合培養を行っても第三者に対しての反応は極めて弱かった。BMTscidマウスに存在するラット由来のT細胞とB細胞における表面抗原の発現は、一見正常ラットと差がないけれども、それらの細胞の機能は異常であることが明らかとなった。
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