研究概要 |
1.砂場の原虫類汚染 かつてクリプトスポリジウムの砂(土壌)からの検出の試みは全く行われていなかったが、我々は蔗糖液を用いた遠心沈殿浮遊法を行うことによって新しい検査法を確立した。すなわち、土壌中のオーシストはその周囲に微粒砂を付着させており、通常の遠心沈殿浮遊法は適用できなかったが、ゼラチンを0.1%添加することによって共沈を防ぎ、高い回収率を得ることが可能となった。この方法を用いて砂(土壌)からのクリプトスポリジウムのオーシストの検出を試みた。予備的に、あらかじめ汚染の確認されている牛舎周辺の砂を検査した場合、その全てからオーシストが検出され、この方法の有効性が明らかとなった。現在公園砂場のクリプトスポリジウム汚染の調査を実施中である。 トキソプラズマの場合はクリプトポリジウムと異なり、砂中のオーシストを形態的に同定することは不可能である。そこでPCR法を用いた検査方法を検討した。すなわち、150μmのメッシュでろ過した微粒砂約2gをゼラチンを含む蔗糖液5mlに懸濁して遠心沈殿浮遊法を行う。上清を45mlの蒸留水にて懸濁後、遠心分離した沈渣を1.5mlのチューブに回収する。これらに1%SDS,1%PVPを含むTNE buffer 400μlに懸濁させ、常法に従ってDNAを抽出しPCRするという方法である。 2.砂場の細菌汚染 調査した144ヶ所の砂場中、120ヶ所(80%)から大腸菌が検出された。同時に行った寄生虫卵汚染の陽性率は43ヶ所(30%)であった。120ヶ所の陽性砂場における大腸菌の砂100グラムあたりの平均菌数は3,400個であった。調査に用いた検査法の最高検出限界は160,000個であったが、調査した砂場の10ヶ所がこれを上回っていた。砂場の大腸菌検査は未だに砂場として使用していない砂からも40-80個/の大腸菌が検出されており、砂場の大腸菌検査は必ずしも糞便汚染の指標とはなり得ないことが明らかとなった。
|