消化管寄生性の原生動物であるブラストシスチスは、ヒトだけでなく種々の動物から見いだされている。これらは抗原性・生育温度・核型などの相違から異なる種類のブラストシスチスが存在すると考えられている。我々は、PCR法を応用した遺伝子ゲノム分析からヒトから分離された株間にゲノムの異同が存在することを証明している。本研究では、ゲノムの相同な株を検出するための特異的遺伝子ブライマ-を設計し、これまでに分離・株化されたブラストシスチス株間のゲノムの異同を把握するだけでなく、今後分離・株化されるブラストシスチス株間の体系的な分類と人畜共通性の株同定を目的としている。大阪市内在住のヒトから分離された15株についてPCR法によるゲノム分析を行い、増幅された遺伝子断片の中から相同性の高い遺伝子断片を切り出し、塩基配列を決定した。これを基にブラストシスチスに特異的な部位の塩基配列を増幅させるプライマーの設計を行い、ブラストシスチス遺伝子ゲノムの一部を増幅させるプライマーを二種類作製した。これらのプライマーを用いてPCR法にて大阪市内のヒトからの15株について検査したところ、14株に増幅された遺伝子断片が得られた。増幅されなかった一株は、ゲノム分析でもゲノムの相同性が見られなかったことから、大阪市内在住のヒトから分離された15株において、14株のゲノムは相同牲が高いと考えられ、残りの一株はこれらの株とは異なったゲノムを有する株であると思われた。以前我々が設計した異なるヒト由来株を同定する3種類の遺伝子プライマーを用い、これら15株のブラストシスチスを検査したところ、いずれのプライマーでも遺伝子は増幅されなかった。以上のことから、今回新たに分離された15株は、以前分離された株とは異なった遺伝子ゲノムを有することが判明した。さらに、今回分離された15株には、二種類のゲノムの異なる株が存在することがわかった。
|