消化管寄生性の原生動物であるプラストシスチスは、ヒトだけでなく種々の動物から分離・株化されている。これらの株は抗原性・生育温度・核型などの相違から異なる種類のプラストシスチスが存在すると考えられている。我々は、PCRを応用した遺伝子ゲノム解析から、ヒトから分離された株間にゲノムの多様性が存在することを報告してきた。本研究では、ゲノムの異同を容易に検出する特異的遺伝子プライマーを設計し、これまでに分離・株化されたプラストシスチス株間のゲノムの異同を把握し、現在保有している約100株のプラストシスチスついて体系的な分類と人畜共通性の株同定を目的としている。 種々のプラストシスチス株をサブタイプに分類するための特異的遺伝子プライマーを、ヒト由来株から7種類、ヒト以外の動物由来の株から4種類、合計11種類設計した。ヒト由来50株のうち48株は、ヒト由来のプラストシスチス株ゲノムから設計したプライマーで検出された。残りの2株は、これら7種類のプライマーでは検出されず、また、動物由来のプラストシスチス株ゲノムから設計した4種類のプライマーでも検出されなかった。従って、検出されなかった2株のゲノムは他のプラストシスチス株と著しく異なっていると思われる。 一方、ヒト以外の動物由来株ゲノムから設計した4種類のプライマーを用い、動物由来の17株について検査したところ、いずれもプライマー設計由来株のみが検出され、他の株は検出されなかった。この事から、種々の動物由来株は、それぞれ異なるゲノム遺伝子を有していると考えられる。 一方、ヒト由来株から設計された7種類のプライマーで動物由来の17株について検査したところ、我々の以前のゲノム解折から人畜共通株と同定されたニワトリ由来株だけでなく、ウズラ由来の3株が別のプライマーで検出された。従って、ウズラ由来の3株は人畜共通性の株であることが判明した。
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