研究概要 |
マウスの腹腔マクロファージをマイソン裂頭条虫擬充尾虫とin vitroでco-cultureし,lFN-γやLPSを添加すると擬充尾虫を加えていないマクロファージに比較し,一酸化窒素合成酸素(iNOS)の遺伝子発現の抑制が認められた.そこで,この擬充尾虫がマクロファージのchemokine(IP-10,KC,JE/MCP-1)やTNF-αの遺伝子発現に及ぼす影響についてNorthern Blot分析によって検討した.1×10^γのマウス腹腔マクロファージを10mlのDMEMで培養し,LPS(100ng/mI)と同時に5隻の擬充尾虫を添加した場合,3時間後のlP-10とJEの発現抑制比率はそれぞれ38.1%,16.8%で,6時間後は51.3%,44.9%とより顕著に抑制された.また,マクロファージの培養液中に擬充尾虫のみ加えて1-6時間培養した後にLPSを添加すると,擬充尾虫とのco-cultureの時間が長いほどlP-10とJEの遺伝子発現の抑制比率は高かった.また,TNF-αはIP-10やJEと類似に抑制も認められた.このように,擬充尾虫はiNOSだけでなくchemokineやTNF-αの遺伝子発現も抑制することが明らかになった. 次に,マウス腹腔マクロファージをlFN-γとLPS刺激する前に擬充尾虫の分泌・排泄物質(ES)を添加し,マクロファージの遺伝子発現に及ぼす影響について検討した.iNOSmRNAの発現はES添加後のpre-incubation時間が長いほど抑制が顕著で,24時間では抑制比率は82.6%であり,nitriteの産生は86.8%抑制された.また,JEもiNOSと同様の抑制傾向を示した.ESを24時間作用させたマクロファージでは,ES除去72時間後でもnitriteの産正は80%以上抑制されていた.さらに,24時間マクロファージに作用させたESを含む培養液を新たなマクロファージに作用させると,nitrite産生の抑制効果はかなり維持されていた.これらの結果から,この抑制因子は非常に安定な物質であり,in vivoでも十分機能することが推察された.
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