Spirometra erinacei plerocercoidの幼虫移行症において、アラキドン酸から産生されるプロスタグランディン類が重要な役割を果たしていることがこれまでの研究結果から示唆される。 Spirometra erinacei plerocercoidの脂肪酸、特にアラキドン酸の吸収、脂質分画への組み込み及び分画間の交換について、温度及びpHの条件を変えて観察し、この寄生虫内でのアラキドン酸の動向を明らかにした。24時間、宿主ヘビ血清で培養すると、18℃の低温の方が37℃の高温と比較し、ω6系脂肪酸、特にアラキドン酸の吸収が盛んであった。従って、低温の宿主に感染した際のアラキドン酸の吸収・活用が幼虫の宿主への侵入のメカニズムに関係しているいることが示唆され、人間などの恒温動物に感染した際は、腸管内容物のアラキドン酸の量が重要な意味を持つことが考えられた。 生理食塩中で6時間培養したplerocercoidは、多価不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸比が、燐脂質分画とトリグリセライド分画でpH及び温度に関係なく逆の変化を示し、燐脂質とトリグリセライドの間で脂肪酸の交換が行われ、幼虫移行症におけるホメオスターシスの維持に関与していることが示唆された。 遊離脂肪酸分画中のアラキドン酸の変化を同様に見ると、37℃では、最初の3時間の減少後増加に転じた。しかし10℃では、最初の1時間で減少後、一旦増加するが、再度減少し、低温環境においてアラキドン酸からプロスタグランディン等への代謝がより進むことが示唆された。
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