申請者らは、三日熱マラリア伝搬阻止ワクチン開発を行うために、先ず三日熱マラリア原虫オーキネート表面の分子量25kDa(Pvs25)及び28kDa(Pvs28)の遺伝子をクローニングし、これらの蛋白の一次構造を明らかにすること、またそれに成功した後、ワクチン抗原となる組み換え蛋白を発現させることを目的として本研究を実施した。 平成9年度の本研究において、申請者らは三日熱マラリア原虫オーキネートの表面蛋白の一つであるPvs28の遺伝子クローニングに成功した。また平成10年度には、2つめの三日熱マラリア原虫オーキネート表面蛋白の遺伝子(Pvs25)をクローニングした。既に他種のマラリア原虫から報告されているオーキネート表面蛋白がP25とP21/28の2つのsubfamilyに分かれることが知られていたので、まず三日熱マラリア原虫Sal1ストレインからクローニングされたPvs25及びPvs28について、その塩基配列から類推されるアミノ酸配列をデータベースを用いて比較検討した。PvS25は他種のマラリア原虫のP25subfamilyと、またPvs28は他種のマラリア原虫のP21/28subfamilyとそれぞれ約4割一致していたが、他方のsbufamilyとの相同性はいずれも低かった。中でもPvs28の4番目のEGF-like domainとC末端の疎水領域の間に、GSGGEまたはDが6回繰り返しているリピート配列の存在が特徴的であった。 今後三日熱マラリア伝搬阻止ワクチン開発に向けて、これらの蛋白を酵母を用いて発現させるとともに、これらの蛋白が他種のマラリアワクチン抗原で問題となっている抗原変異を持つかどうかを、流行地の三日熱マラリア原虫分離株を用いて検討する予定である。
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