研究概要 |
本研究は、マラリア原虫侵入型のうち人への直接の感染型であるスポロゾイトの先端部小器官のロプトリ-に局在する蛋白の機能と構造を明らかにすることを目的として,ネズミマラリアの系を用いて行った。本年度は,スポロゾイトの先端部に存在する小器官を虫体から分離精製し,これを抗原として単クローン抗体を作成することを試みた。そのために、ネズミマラリア原虫(Plasmodium yoelii)に感染したマウスの血液をハマダラ蚊(Anopheles stephensi)に吸血させ、吸血14日後に蚊を解剖した。蚊の唾液腺と胸部から遠心分離法によってスポロゾイトを回収し、精製した、このスポロゾイトを加圧細胞破砕器にて破壊した後、蔗糖密度勾配超遠心法を用いて各細胞内小器官を分取することを試みた。超遠心によって得た各分画を電子顕微鏡によって観察し、先端部小器官を含む分画の検索を行ったが、超遠心によってロプトリ-に富む分画を得ることは出来なかった。そこで、精製したスポロゾイトを抗原として免疫したBALB/cマウスの脾細胞とSP2/oミエローマ細胞を融合させ、単クローン抗体の作成を試みた。ハイブリドーマ培養上清のスクリーニングはスポロゾイト粗抗原とスポロゾイトの主要表面抗原であるCS蛋白の繰り返し部分の合成ペプチドを用いたELISA法を用いて実施した。現在、スポロゾイト粗抗原を用いたELISA法で陽性クローンのうち、CS蛋白合成ペプチドに反応しないハイブリドーマのスクリーニングを行い、虫体内部の抗原に反応するものを作成中である。次に、蛍光抗体法を用いてスポロゾイト先端部に局在する抗原に対するクローンを選択する予定である。
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