研究概要 |
本研究では、スポロゾイトの先端部に存在する小器官を虫体から分離精製し,これを抗原として単クローン抗体の作成を行った。ネズミマラリア原虫(P.berghei)に感染したマウスの血液をハマダラ蚊(AnoPheles stephensi)に吸血させ、経時的に蚊を解剖した。その結果、感染後20日から35日の蚊の唾液腺から多数のスポロゾイトを回収できることが判明した。そこで感染20日後の蚊の唾液腺から回収したスポロゾイトをマウスの尾静脈に注入し、スポロゾイトの感染性を検討したところ投与したすべてのマウスに感染が成立した。以上の結果から、感染20日後の蚊の唾液腺から回収したスポロゾイトは感染性を有する正常のスポロゾイトであることが確認されたので、このスポロゾイトを材料として以下の研究を行った。精製したスポロゾイトを粗抗原として免疫したBALB/cマウスの脾細胞とSP2/oミエローマ細胞を融合させ、単クローン抗体の作成を試みた。スポロゾイト粗抗原を用いたELISA法で陽性を示すクローンの大部分がスポロゾイトの主要な表面蛋白であるCS抗原に反応することが予想されたので、ハイブリドーマ培養上清のスクリーニングはスポロゾイト粗抗原とスポロゾイトの主要表面抗原であるCS蛋白の繰り返し部分の合成ペプチドを用いたELISA法を同時に実施した。そしてスポロゾイト粗抗原に陽性でCS抗原には反応しないハイブリドーマのスクリーニングを試みたが、現在までのところ目的とする反応性を示すクローンの作成には成功していない。現在、さらにマウスを免疫して新たなクローンの作成とスクリーニングを行っている。今後、目的とする虫体内部の抗原に陽性の反応を示すものを得ることができれば、次に蛍光抗体法を用いてスポロゾイト先端部に局在する抗原に対するクローンを選択する予定である。
|