研究概要 |
我々はすでに中米グアテマラおよび南米各国産のT.cruzi分離株についてアイソザイム解析により系統学的比較をおこない、調べた分離株は系統的に大きく3グループに分けられることを報告した(Higo et a1.,1997)。すなわちgroup 1はほとんどのグアテマラ株と南米コロンビア、エクアドル、ブラジルの株が含まれ、group 2はグアテマラから見つかった1株のみから成り、group 3は南米ブラジル、パラグアイ、チリ産の株より成る。グアテマラの主要な系統であるgroup 1は南米特有な系統であるgroup 3とは非常に離れている。 今回さらに、グアテマラとその周辺および若干の南米産株についてアイソザイムによる解析をおこなった。調べた株はメキシコ産5株(保虫宿主)、グアテマラ産23株(ヒト)、南米からはペル-産6株(ヒト2株、サシガメ4株)である。その結果前回の結論をさらに補強すると共にあらたな知見も得られた。すなわちグアテマラおよびメキシコ株はグアテマラの1株を除いてgroup 1に含まれ、グアテマラ周辺の中米の集団が主としてgroup 1から構成されていることが確認され、またペル-のヒト由来の2株がgroup 2(グアテマラからもあらたに1株みつかった)であり、group 2が南米にも分布していることが判明した。しかしながらgroup 3は依然としてグアテマラ周辺の中米からは見つからずこれが南米特有な系統であることが再び示唆された。シャーガス病は南米では心臓型と消化管型が混在し中米では心臓型のみみられるが、この病型の地理的変異が今回判明したT.cruzi遺伝子の地理的変異と関連性があるかもしれない。この点を追求するために現在RAPD-PCR法による解析を続行中であり、さらに適当な遺伝子のシークエンスも検討している。各系統の株のマウスに対する感染性、病原性も今後検討していく。
|