研究概要 |
シャーガス病の病型とT.cruziの系統との関連性をさらに調べるため、病型の異なる中米と南米から新たに32株を追加し、合わせて100株についてアイソザイムおよびPCR産物の解析をおこなった。また疫学的、病理学的に重要な遺伝子交換の可能性をみるため、グアテマラ集団のアイソザイムのデータについて集団遺伝学的解析をおこなった。 アイソザイム分析とそのデータから作成した系統樹によるとHigo et al.(1997)と同様系統的に離れた主要3系統が確認された。このうち主要グアテマラ株と南米株から成るgroup1と南米株のみから成るgroup3は地理的分布も異なっており、病型の地理的分布との関連性を示唆していた。PCR産物の解析ではプライマーS-1629,S-1630においてgroup1とgroup2の間に差がみられた。現在group3について解析中である。シャーガス病病型に対するT.cruziの遺伝的関与をさらに明らかにするためには、各地域の各病型の患者から株を分離し、アイソザイム、DNA分析で解析する必要がある。 遺伝子交換をみるための集団遺伝学的解析は、交配可能な比較的狭い地域としてグアテマラ集団についておこなった。遺伝子型頻度の期待値と観察地の比較は、GAPD,ME2,MPIの3種の遺伝子座についておこない、GAPD,MPIは有意の差がみられたが、ME2は有意の差がなかった。平均へテロ接合度はすべての遺伝子座について平均をとり、期待値と観察値を比較したところ差はみられなかった。連鎖不平衡係数はGAPD,ME2,MPIの組み合わせ、(GAPD,ME2),(GAPD,MPI),(ME2,MPI)について解析し、ME2,MPIの組み合わせは0.8と比較的連鎖不平衡に近い値であったが、GAPD,ME2およびGAPD,MPIの組み合わせはそれぞれ0.171,0.425と小さな値を示した。これらの結果は必ずしも遺伝子交換を否定するものではなかった。さらに別の指標での解析を進める予定である。
|