研究概要 |
我々はトキソプラズマ原虫に代表される細胞内寄生原虫感染における感染細胞内の抗原提示機構について研究を進めており、今までに1)トキソプラズマ感染細胞がトキソプラズマ抗原を細胞内で抗原処理しMHCクラスIあるいはクラスII分子結合オリゴペプチド抗原として感染細胞特異的CD8^+CTL、CD4^+増殖性T細胞、CD4^+CTLに抗原提示することを明らかにし、2)トキソプラズマ感染細胞特異的CTLが認識するMHCクラスI分子結合オリゴペプチド(T細胞エピトープ)のアミノ酸解析に成功し、表面プラズモンレゾナンスにより合成トキソプラズマSAGlベプチド289-297が感染細胞特異的CD4^+CTLに強い抗原性を示すT細胞エピトープであることを報告した(Biochem.Biophys.Res.Commun.236:257-61,1997)。 本研究ではさらに、感染細胞内抗原処理・提示機能分子である分子シャペロン、トランスポーターの抗原処理・提示機能の解析を進め、3)細胞内蛋白質のフォールディング、オリゴマー形成、分子の膜貫通・移動などの抗原提示機序に不可欠であり、且つその分子構造がMHCクラスI分子に酷似する分子シャペロンである熱ショック蛋白質HSP70がトキソプラズマ感染宿主細胞における抗原提示機能分子として存在し、トキソプラズマ感染ヒトメラノーマから得たHSP70が感染細胞特異的CTLのエピトープとなることを明らかにした(Microbiol.Immunol.41:553-561,1997)。又さらに、トキソプラズマ表面抗原や抗原提示機能分子による抗原提示細胞の抗原提示能修飾により誘導される細胞性免疫反応を介したワクチン開発を目的として、トキソプラズマ主要表面抗原SAGl遺伝子をマウスTAPトランスポーター欠損腫瘍細胞株RMA.Sに遺伝子導入した。RMA.Sは強力な抗原提示能をもち、このSAGl遺伝子導入抗原提示細胞株でマウスに免疫することにより、トキソプラズマ感染細胞特異的細胞性免疫が誘導されトキソプラズマ強毒株(RH株)感染に対するex-vivoワクチン効果が得られることを明らかにし報告した(9^<th> International Congress of Parasitology Tada,I.et.al.(eds)Monduzzi Editore,p69-75,1998;Microbiol.Immunol.43(1),87-91.1999)。
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