1、 細胞内寄生性トキソプラズマ原虫由来ストレス蛋白の遺伝子クローニングと宿主免疫応答の解析を行った。 (1) トキソプラズマ原虫hsp70遺伝子をクローニングしてリコンビナント蛋白・モノクローナル抗体を作成し、二種類の原虫hsp70様蛋白を同定した。トキソプラズマ原虫の経口感染後、宿主マウスの血清中抗原虫hsp70抗体価を調べたところ、急性期には検出されたが慢性期では殆ど検出できなくなつり、他の原虫抗原に対する免疫応答とは異なっていた。 (2) 精製した原虫hsp70をマウスに免疫することにより、原虫感染に対する防御免疫を誘導することに成功した。hsp70免疫群では、弱毒株感染後の脳内シストの数が有為に減少した。防御免疫はリコンビナント蛋白のみの免疫では充分に誘導できなかったことから、hsp70結合原虫抗原が防御免疫の誘導に関与する可能性が示唆された。 2、 トキソプラズマ原虫感染防御における細胞傷害性T細胞のエフェクター機構の解析を行った。特に感染細胞内の寄生原虫が、特異的細胞傷害性T細胞によって傷害されるか否か検討した。 (1) DNA分解酵素処理後に原虫DNAを調整して定量的PCRを行うことにより、生きた原虫を容易に定量する方法を確立した。 (2) この方法を用いて、原虫感染細胞が細胞傷害性T細胞によって破壊される際に細胞内原虫が傷害されるか検討したところ、原虫は傷害されないとの結果を得た。細胞傷害性T細胞は感染細胞にアポトーシスを誘導するが、原虫の処理はマクロファージなどの他の細胞によって行われる可能性が示唆された。
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