研究概要 |
住血吸虫ミラシジウム体表繊毛は低浸透圧下で運動し、高浸透圧で停止する。この繊毛運動の開始と停止の調整機構を明らかにすることが本研究の目的である。繊毛運動調整機構がある程度明らかになっているゾウリムシでの研究報告を参考にして、我々はミラシジウム体表の繊毛運動調整機構に下記する仮説を与えそれを裏付ける実験を現在行っている。 作業仮説 繊毛運動開始:メカノレセプターが低浸透圧を受容しcAMPの産出、Aキナーゼの活性化、イオンチャネルの開閉、膜の過分極という一連の反応によって起こる。 繊毛運動停止:高浸透圧受容により、cGMPの産出、Aキナーゼの活性化、イオンチャネルの開閉、膜の脱分極という一連の反応によって起こる。 本年度は繊毛運動開始の作業仮説を裏付ける実験を行っている。これまでに得られた成果を上げる。 1.cAMPが繊毛運動を開始させることの裏付け 8プロモcAMP,forskolin,IBMXを遊泳停止(繊毛運動停止)ミラシジウムに与えるとミラシジウムは遊泳を開始する。しかし遊泳速度は水中遊泳虫体の1/5で、螺旋軌道を示す遊泳行動を行わない。繊毛には3種存在するのですべての種の繊毛が活性化されてない可能性がある。 2.cAMP濃度上昇の裏付け 低浸透圧刺激を与えた虫体でcAMP量の増加をEIAで測定中であるが、確かな増加成績は得られてない。 3.イオンチャネルの開閉の裏付け どのイオンチャネルが開閉すれば繊毛運動が開始するかをイオンチャネルアクチベータ-とインヒビターで検討中である。Na^+チャネルの関与がありそうとの成果を得ている。 4.膜電位感受性色素を用いて膜の過分極を測定する方法を検討中である。
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